虫歯が進行してしまうと、歯の中の神経（歯髄）まで届くような深い虫歯となります。

そのような深い虫歯に対しては、従来は神経を取ってしまうような治療がメインでした。

今回はそのような深い虫歯に対して、神経を除去せずに保存する治療を行なった１例を紹介します。

過去の治療による、古い詰め物の周囲が黒ずんで虫歯になっていました。

鏡を用いて裏も確認したところ、やはり黒ずんでおり、虫歯の存在が確認できました。

術前にX線写真を撮影したところ、大きな黒い影が写りこんでおり、虫歯が深いことが予想されました。

虫歯を除去すると神経が出てきてしまうことが予想されました。

古い詰め物を外すと、詰め物の下はやはり虫歯となっていました、虫歯を赤く染める液体で確認しながら悪い部分を除去していく作業に入りました。

この時点ですでに麻酔をしているので、治療中の痛みはありません。

余計な菌が入らないように、歯にカバーをかけた上でさらに悪い部分を削除しました。

予想通り深い虫歯となっており、虫歯を除去すると歯の神経が見えてきました。

従来の治療法であれば、この時点で歯の神経を全て抜いてしまう処置に移行します。

しかし今回は患者さんの希望もあり、神経の保存処置を行うこととなりました。

浅部の神経を一部除去した上で洗浄し、MTAセメントという薬剤を塗布しました。右写真の白い材料がMTAセメントです。

MTAセメントによる神経保護を行なった後、その上部はレジンと呼ばれる樹脂でカバーし、歯の形態を再現していきました。

X線写真を撮影し、MTAセメントが適切に入っていることが確認できました。

術前後の比較写真です。治療直後は歯肉が荒れて出血がありますが、問題なく治癒しました。

術後の痛みもなく治癒経過は現在も良好で、患者さんにも喜んで頂けました。

従来の治療法では歯の神経を抜かないといけないような深い虫歯であっても、このように神経を殺すことなく治療を行うことができる場合があります。

歯の神経保存療法についてご興味ある方は、ご相談ください。